(築約40年木造)リノベーションとは・・・・。

リノベーションとは「今あるものを活かし、新しい価値を創造すること」と月と雨建築舎では定義しています。

その原点にあるのは、すでにある空間や材料をうまく活かしながら新しい世界を創り上げる手法「リサイクルとイノベーション」という言葉。このリノベーションという行為には時間や空間との対話があります。

古くなったものを綺麗に張り替えたり、塗り替えたりするのは「リフォーム」

古くなったお家をスケルトン状態や大きく構造躯体を変化させてつくりたいように作るのはリノベーションというよりも大規模改修という表現と考え、月と雨ではそのような行為とは一線を画しています。

では、「今あるものを活かす」とは具体的にどのように行うのか。

現在広島市でリノベーションさせて頂いている「高陽の花ノイエ」の作業がその段階に入ってきたのでここで少し実例を交えてお話しさせて頂きます。

新築の現場では「目新しい素材」をいかに探して取り入れるか。それを競って「個性」と表現している節もあるように感じていました。

しかし、本来個性とは「唯一無二」同じモノが二つと無い。そのようなモノ。でも、それを追求して「個性」表現しても恐らく住む人がその本来の個性を求めているものかというとそうではない。情報の中の自分の好みが要望になる。他人の感性から逸脱しすぎたところの本来の個性は求めているものではない。他人からのある程度の評価を得られるものでないといけない。その幸せは他人本位であり、流行りの移り変わりで今求めるものは将来「古く」なる。SNSなどで急激に流行ったものは「アンチ」を増やしてしまいます。

本当の幸せは自分の中にある。“自分が”良いと思えるモノを、自分がモチベーションを高く維持できるモノを選択する。その為に自分の感性で自ら手を加える。

そのようなことを蔦屋家電のイベントでお話しさせて頂きました。

今回のお家はDIYリノベではないのですが、その大切な基本思想の「今あるものを活かし、手を加える」行為を施します。既存の建物の流れた時間、眠っている素材の可能性。それらを読み解きながら、「継承」したり削ぎ落とし「抜いていく」ことで再構築する。そこには時間や空間との対話がある。

土台にあるのは「コストをかけず、他にはないモノを創り出す」そのような考えではありますが、それは無闇にリサイクルしようという考えではありません。コストをかけないと言っても創る過程での「手間」は取り替え以上にかかることの方が多いかもしれません。それは創り手側の姿勢で大きく変わりますが、性能や耐久性を妥協せず、できるだけ永く使い込めるモノを残し創り上げるように考えます。だから、かえって手間が増えますが最後に必ず良いものが出来上がるように考えています。リノベーションは想定外の事柄が起こることが多いので鍛えられています。

現在向き合っている部位は外部の「軒天」と内部の「天井」

まずは軒天のお話から。

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今回の外観は既存瓦とサッシ以外「オールホワイト」にする計画。既存素材を活かし「異なる白の表情」が陰影をつくり、リズムが生まれることを想定しています。

通常のリフォームならプリント合板の軒天には新たな板を打ち増しして塗装するのですが、今回はその木目は潰し、目地を表情に浮き上がらせ、あまり見ない仕上げに化けてもらいます。インスペクションで目視した感じでは状態が良さそうなのでこの計画にしたのですが、最初の工程で「ケレン」(既存軒天の表面を研磨する作業)を行った際、

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合板が浮き上がっている部位が見つかりました。

原因は釘の劣化による保持力低下。軒天下地はちゃんと施工されている様子だったので、釘の打ち増しを全体的に行うことに。

 

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打ち増し施工をしている際に思ったことがあります。軒の出は日本の気候には必要。この軒先のおかげで家の各部位が長持ちしていることが要所に分かりました。

この施工の際の難関は・・・・玄関の軒先部でした。

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狭い上に夏の炎天下で熱を持つという次元を超え、コンロで加熱されたフライパン状態。

汗が板金屋根に落ちると「ジュ」って音が出そうな状態。塗装職人も「火傷しそう・・・」と、休み時間に苦笑いしていました。

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勇気を出して狭小スペースに挑むも、腰袋を外しただけでは入らず、

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ヘルメットを脱いでようやく頭が入るだけのスペース。

妥協なく施工できないではなく、やりきるという意地です。

この後、無事に軒天のシーラー作業、今回打ち増しした股釘の頭の処理を行う工程に進みました。

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これで後は見たことのない仕上げに化けるのを愉しみに待って頂けたら。と、クライアント様が見てテンション上がって喜んでおられるその瞬間を夢見て手間を加えて唯一無二の仕上げを目指していきたいと思います。

もう一つの部位は内部の旧和室の「ラミ天」と呼ばれる「ラミネート天井」

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木目がプリントされたベニヤを解体することなく、北欧スタイルの内装に合わせる為にこれもひと手間加えて馴染ませようと計画しています。解体のゴミを減らせることや、解体してまた新しく造り変える大工手間、下地の木材・建材費を考慮すれば、ひと手間加えることでお金をかけずに美しくすることができます。大切なのは「バランスセンスです」と、言っておきます。

塗装下地のシーラーを施し、仕上げ材を施工してみると・・・

 

今回は見事に「アク」が浮き出てきました。

数回塗りを重ねると止まるかと安易に考えていましたが、

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さすがに止まりませんでした。アクは「油性」だから希望的観測でした。

仕上げ材のクレイペイントは水性なのでアクドメにも注意が必要です。

今回は「アクドメール」をまず試してみました。

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この水性アクドメールでダメなら、水性の最終手段はまだあるのですが、それはあくまでも最終手段。このアクドメールで止まってくれることを祈りながら・・・・。

このアクドメール施工後のアクの風合いも、これはこれで美しく思います。意図的に施工した「エイジング」や「ラスティック」と呼ばれる種類の塗装技術を施されたようにも見えました。

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アクドメールの施工後、本日クレイペイント再施工してみると・・・・

 

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施工当日は今までのようにアクは浮いてきませんでしたが・・・果たして・・・・。

これで数日様子をみて仕上げを検討しようと思います。

このひと手間にこだわるのも、今回の計画で内装もほとんどを「ホワイト」にする計画だから。内装も外観と同じ考えで「違う素材の白」でオールホワイトにリズムと強弱をつけたいと思っています。

しかし、この2箇所でもこのように何かと予期せぬことが発生します。

今まではこれを「そんな手間をするぐらいなら、やり替えた方が早いじゃん」という会話になるのがこの世界の主流だと思うのですが、既存の家とともに時間を積み重ねてきた素材と向き合い、新しい空間に馴染ませる。その為の対話を作業中も行なっている。その上に成り立つ見たこともない仕上げの風合い。その引き出しに可能性があり、もう少し追究してみたいと考えています。