梁が折れている
ある一つのプロジェクト。
天井解体して二階の床のしなりが気になり、調査してみるとまさかの最悪の事態。梁が折れていました。
強度的に梁成が足りていないのが一見して認識でき、そして木組み的にもそうならざるをえなくなった理由もなんとなく把握できました。
この容姿のまま無理やり補強しようとすれば、それは補強にはならないと判断しました。

ここからはじまる物語
でも、大丈夫。
今回は、ここから新しい物語をはじめる一つのきっかけとも思えました。
クライアント様にすぐ報告すると、クライアント様もしっかり同じ方向を向いて下さりました。これは「ある程度クライアント様の価値観に周波数を合わせることができた」という信頼関係であるとも思っています。
現時点で、まだはっきり具体的造作案は決まってはいませんが、「新築、リフォームではまず存在させない思いもよらぬモノを堂々とそこに存在させてみよう」と思っています。
これがこの空間で新しいコトを生むキッカケになるようなモノを。

思い通りにならない事を、創意工夫で面白く
それはそのモノ自体に意味があり、無くてはならないモノであり、でもそれは決して狙って出来るモノではない不便な個性を持つ存在。
空間を“デザイン”する為に小手先だけのつじつま合わせなど絶対にしない。
むしろ、狙って“デザインをつくる”ようなプランではこのような選択など絶対にできない。
堂々と真正面からその「既存不具合」を表現してみたい。
途中このような既存不具合が発覚したから、かえってこんなに面白い唯一無二の空間が出来上がったのだと言われるようなモノを。
リノベーションは人生と同じだなと最近思います。
思いもよらぬ問題を嘆くより、それをいかにプラスに変えてやろうかと考える方が愉しい。
楽しいだけの人生はまず望めない。目の前の事象をどう捉えるかだ。と、精神的に弱い自分に言い聞かせました。
人生の困難が人間の厚み、深みとなるように、古い家リノベーションの現場における不都合な既存不具合がこの空間の深みを増してくれるように創造したい。
一人でやるのではない。
クライアント様とやりながら考える壮大な物語です。
リノベーションを依頼してくださるクライアント様はどなたも人生をかけている。
だから、依頼を請けて携わる僕たちもそれだけの覚悟を持って建物と向き合っていきます。