(実例2軒)和式トイレの質感を残して改修。

古い家を骨組みだけ残して解体する「スケルトン」はコストもかかり、新しい価値を付け加えるというより、新築同然に安易にゼロから作り込まれた真新しいリフォーム空間にしか思えず、個人的にはあまり積極的に取り組んでおりません。

古さを魅力的に内包させるにはどうすればいいか、古さを魅力的に美しく生かすにはどうすればいいか、性能を改善させ手を加え過ぎないところを、いつもその目の前にある魅力的な古い空間と向き合ってクライアント様と決めている。そんなリノベーションをしています。この2件の和式トイレは「床解体」しか行わず、古さを魅力的に内包させた美しさに生まれ変わるように手を加えたトイレの内装です。

一つ目のクライアント様との物語のテーマは「古さを残す。でもトイレはこのままでは嫌。」そんな感じからのスタートだったと思います。

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昔の家でよく見かけた魅力的な木製ドアのある和式トイレ

そのままでも魅力的なタイルの残るトイレ空間。快適な洋式トイレに改修するにはどうしても床だけは解体しないといけません。残念ながらタイルにお別れを決意して、まずは給水の取り外し

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そして解体。

見事なオブジェ状態を通り越し、器具を取り外し、配管を新しく整備して

床下地造りの後、今回の仕上げはモルタル床。

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この工程までは周りの壁・天井は既存状態のままです。そしてこの後も既存のまま。手法は白い塗装をしただけ。

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綺麗に仕上げるコツは・・・・

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「何度も綺麗に塗り重ねる。」これに限ります。

そうして出来上がったトイレ空間が

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こんな感じ。新築ではできない質感として古さを内包させた空間。白は使い込まれて、汚れ、タイル部の塗料は剥がれる事もある前提で計画しています。「使い込まれるほどに」「時が経つほどに」しっかり使い込まれた美しさとして育まれる空間。真新しい傷一つ無い空間に価値があるとすれば、傷つき、汚れたら価値が下がります。しかし、傷、汚れを良しとして、むしろ魅力として取り込む計画なら価値は下がることはない。

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この古い木戸もその質感とスタイルを継承して

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再生させています。

もう一つの事例は

上記の事例以上に「手を加えない」が物語のテーマとなりました。

昔の大工さんが丁寧につくられた和風のトイレ空間をそのまま残しつつ便器だけを変える。壁も天井も塗装はしない。古い便器の跡は、クライアント様自らが補修に挑戦される。このようなスタートでした。

左に小便器、右側に和式トイレの既存状態から器具の取り外し。

スタート前に懸念された「小便器裏の仕上げ」も丁寧にタイルが貼られており、補修は最小限の和式タンク裏だけで済みました。

そして今回も床だけの解体。それと同時にクライアント様は

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改修に使う床材「無垢の床板」に塗装DSC_0343

 

トイレの床に無垢板は・・・という意見もあるのですが、ここもクライアント様との考え方として「お手入れを重ねる」というひと手間を選択して「汚れ、シミ」も拭き掃除、そしてワックス塗装がけで時を重ね「味を出す」という価値観を選択しています。

解体し、便器オブジェから給排水を新しく整理して、大工工事で木下地を組み、断熱材を敷き詰めクライアント様がDIY塗装された床板を大工さんに仕上げて貰って完成です。

クライアント様の聚落補修も下地から補修されました。

以前の改修で出た土壁を廃棄せず、今回クライアント様自らその古い土を練り再生に挑戦。見事に土壁下地を作り再生されました。その部位を大切な物語にする為に全体補修して馴染ませず、部分補修としてこの空間は完成です。リノベーションの物語がそのままデザインとなった聚落壁になりました。

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このトイレは最後にもう一つ物語がありました。新規の床板と既存の敷居の色が驚くほど馴染んでいたという計画していなかったシンデレラフィットがクライアント様により発見されました。狙っていなかっただけにクライアント様と二人で一緒になって笑ってしまいました。その後、そんなエピソードの既存敷居を愛おしむように、お知り合い自家製のミツロウワックスを擦り込まれていたのが忘れられません。

ここまで手を加えられるクライアント様なら僕たちは本当に壊し過ぎず「保全」に務める。そのような学びをたくさん頂いた物語になりました。