無垢材でデッキを造作するということ。それを手入れしながら使い込んでいくこと。それは小さな憧れでもありました。そんな暮らしを愉しめたら。そして、それを自宅で計画した時、意外にも同業の職人さん、業者さん、そして木材屋さんですら「悪い事は言わないから、やめておけ。」と、ほとんどの人から後ろ向きのアドバイスを頂きました。
その理由は「まともにメンテナンスできはしない」「メンテナンスが大変だ」「将来必ず無駄になる」そんな感じです。言われている事はもの凄く理解できました。それでも、自分でメンテナンスもしてみたかったので挑戦しました。
造作してあれから7年。独立してアトリエの作業場にもなったデッキ下、梅雨時期前に頂いた材料が溢れてきた事がキッカケで、この際リメイクする事に。7年雨ざらしの材料を解体しながら劣化具合を確認してみました。
このリメイクのキッカケとなった廃材の一部はこれぐらい。さらにここから増えました。「勿体無い話があったら、アイツに言えば活用するはず。」そう思ってくれる職人さん。ありがたい事です。
しかし、延べ床30坪弱しかない自宅アトリエの周辺、活用できるスペースは限界を迎えつつありました。
屋根のある大きな倉庫でもあれば良いのですが、贅沢ばかりも言ってられません。
防水性の高いシートを2重にして、さらに自宅は風の強い斜面に建っているのでシートが飛ばないように見た目が悪いのですが、作業スペースのモノで押さえまくっていました。
しかし、これではこれから訪れる梅雨シーズン、防水シートをしてもこのままではカビてしまいます。結局このままカビてしまい、廃棄してしまうようでは、せっかくの職人さんの心を台無しにしてしまいます。
またこのままでは、足元のスペースも大半を占め、作業スペースすらない状況。木製デッキ下も、造った時と今では使用目的も大きく異なってきたので、今の作業スタイルに合うように木製デッキ7年目のリメイクを決断。
そして、ここからが今回の本題。
このリメイクで柱を2本抜きました。素材は檜、この柱の塗装は造作当時の8年前のまま。その柱の柱脚はどの程度劣化しているか・・・・。そこに興味がありました。貴重な実験結果です。
柱の柱脚に置いていた束石の状況はこの様子でした。
鉄製の羽子板の部は、外気に触れている柱の外側には赤錆びはほとんど無く、柱に接触している内側は写真のように錆びが出ていました。
職人や業者からは「束石の溝に水が溜まって腐りの原因になるよ。」と教えてもらったことがあったのですが・・・・。その束石のほぞ穴には
やはり水が溜まっていました。記憶ではこの作業の前に雨が降ったのは一週間以上前です。それでもこれだけ水が溜まっている状況は「気持ち悪いな」と感じました。
これは今後造作する時、意識しておかないといけないと痛感。
そして、いよいよその束石に立っていた檜の柱の柱脚です。
こちらは、驚いたことに劣化症状は確認できませんでした。白く写っているのはコンクリート製の束石の表面劣化のセメント成分です。少し安心しました。
自宅のデッキを造作した後、このデッキの日々の状況、変化を日常観察して不安に思ったのは柱の足元、「柱脚」でした。檜でもシロアリにやられる事があります。それも柱の小口、この「柱脚」の部位が一番の弱点です。木製デッキはシロアリを家に呼び寄せてしまいかねない不安材料です。
僕が独立してからこのような環境で自社責任施工する場合、柱脚には基礎パッキンを用いて無垢の柱脚が直接束石に触れないように対策しているので、それなら状況はこれより良いと確信できました。
最後に、メンテナンスで重要なのはやはり「塗装」
7年前、周りからアドバイス頂いた通り、「塗装しないといけない」と思いながらも一度もメンテナンスする余裕はありませんでした。それがこの状況です。
特に塗装劣化が進んでいたのが「北面」でした。日当たりが良いところも紫外線で劣化も進みますが、北面は「日陰」が原因だと感じました。太陽熱が直接当たらない分、乾きが遅く冬季に湿潤状態と凍結を繰り返しているのではないかと思いました。含浸性の自然塗料でも塗膜を浮き上がらせたような症状がみられました。
この住居では次の季節の支度に、蜂や山間部に多い黒羽アリやカメムシ対策を行うことと同じように、小さくてもちゃんと手間ひまかけて塗装も行っていきたいと思いました。
これも大切な「暮らし力」。住居に携わる者、住居で暮らしながら働くことが大切だと思っています。これが事務所を構えたり、大きな立派な倉庫で仕事をするようになったのでは、「住居で暮らす力」が身につかないと思います。人から聞いた話、住居の症状を毎回観るだけでは無く、自分が実際に住居で暮らし、日々の問題を改善する為にどうするか考える。それが住居屋として一番大切な身体感覚だと思うようになりました。
疲れないように、嫌にならないように一気にノルマを立ててやろうとせず、小さく手間ひまかけて少しずつ。愉しみながら。