(マンション)ご本人の“素敵”な部分を生かせるように

今あるモノを生かしきるには、プランありきの空間づくりでは実現できません。古いモノの個体差を大切に、素材を扱う中にこそ大切なプロセスがあります。勿論、そこからの建築段階には更に重要なプロセスがあります。実はリノベーションの現場は泥臭く埃っぽいものです。それでも、と言うよりだからこそ、重視するのは柔軟でオープンな建築プロセスだと思っています。

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そしてリノベーションの現場は刻一刻と変わります。その為、必ず月と雨建築舎は建築プロセス全般に関わり、限られた予算の中で簡素でありながらも美しい、クライアント様好みの美しさに仕上げることに集中していきます。

さらにリノベーションに取り組む上で、物事にこうでないといけないという固定概念を持たないようにも心がけています。何事にも変化は付きものですし、まして改修やリノベーションの現場となれば、何が起こってもおかしくありません。その事をわきまえて変化に適応していけばいいと考えています。

そういう面でDIYの精神がしっくりくると思っています。

状況が制約を生むなら、その制約をのめば良い。それができないと「今あるものに新しい価値を創造する」ことは不可能だと思います。ディテールに流動性を持たせ、工事と連動させる。これは現場経験のある者にしか身に付かない感覚だと思っています。ただし、そこで大切なものを見失わないようにしないといけないから大変なのです。

なぜ、月と雨建築舎がDIYサポートをしているかという根本がそこにあります。よく耳にする言葉で「愛着がわくから」といわれてますが、「だからDIYしましょ」となかなか訴えるようなことはできませんでした。なんとなく自分の中でしっくりきていなかったんでしょうね・・・・。でもDIYをリノベーションで取り入れているのは自分でもなぜだろうとここ数年間、言葉を探していました。

そんな中、月と雨建築舎のリノベーション現場でDIYされた方も、されなかった方も言葉にして頂いたニュアンスがあります。

「つくる時間を経たものは、じっくり味わえる」

今回もDIYサポートと言っても木工事はこちらで行わせて頂きました。しかし、そのあいまに、整理計画についてじっくり考えて頂きました。DIYする時のように実寸で。

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このような(写真上)状態で1日考えて頂いて、奥様から実際に(下の)写真を頂きました。

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これを元にメモを追加しながら、スケッチしたのがこれになります。

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マンション 特有の柱型のある押入れ空間。その柱型のスペースに「洗濯待機場所」と「アイロン・アイロン台の整理場所」をつくってしまう。そして、その間の空間を利用して「ハンガーストック」をつくってしまう。とても素敵な発想だと思いました。この住居での暮らしのプロは僕ではなく奥様です。僕はお話しさせて頂きながら沢山のクライアント様から発想を学び勉強させて頂いています。

さらに、6段の棚に何を整理して、どのように取り出すかもシミュレーションして頂きました。

6段の棚にはこのように書類を「箱」で整理してみようと思います。そんな奥様のイメージスタートから、この現場の「端材」を活用することを決めました。使っていてたのしくなる木箱を端材で取れるだけ沢山つくってプレゼントさせて頂こうと思います。

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収納計画の「正解」は、誰に対しても万能な一般論よりも「この住居で暮らす方に合わせる」ということが大切ではないかと思います。収納計画をする際にモノを減らして捨てるということを考えるよりも、まずモノを大切に、あるものを整理する。もちろん、「しまう」よりも「取り出しやすく」を計画するには、今の暮らし方を自分自身で見直して頂くことが大切になります。それを一緒に整理することで、使う時にたのしく、ストレスなく片付けたり取り出したりできる「モノとたのしく暮らせる」収納ができると思います。

このような過程で一緒につくる空間は、コツコツと考えたり作業したり時間はかかるけど、時間をおうごとにみえてくるもがあります。徐々に暮らしが変わっていくことを実感することでたのしみも味わえます。このように少しずつでも心が上がっていくことが「ゆたかな暮らし」へと導いてくれるような気がしています。

ここまでくると、今度は次第にクライアント様と共に「ディテール」にも想いを込め、再編集するようになります。これがリノベーションの醍醐味だと思いませんか?

今回の後半作業は奥様のDIYに大変助けて頂きました。

この空間は「背面の板」はそのまま活用して奥様にDIY塗装して頂きました。塗料は「いろは」です。「床の板」と「天井の板」は手をつけず残しました。

今あるモノを生かして、余分を抜いていく。空間にとって美は必要不可欠。まして日常の空間は美しくなければ価値がありません。暮らしの空間に美と説得力さえあれば、そこには自ずと表現力と物語性も備わる事を今まで携わってきた住居が教えてくれました。状況を受け入れ制約をのむ時に大切なこと、それはクライアント様にとっての大切なモノやコトは何か、そして日常空間の美しさ、それら2つは見失わないようにしないといけません。

そして、もう一つ暮らしに大切な要素がありました。

「日常生活で使ってたのしい」という感覚。暮らしにはそれらがとても大切だと思いませんか?

その為の大切なプロセス。「つくりながらも一緒に考える」それがDIY的要素でもあり、ここにDIYが「愛着」につながる要因があると最近では思っています。

それでも人生は続くのだから。

どうせなら、1日の最後ぐらいは心穏やかに、「よし!あしたもがんばりましょ。」そう思える、日常使うことがたのしくなる、時つむぎの暮らしを。

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