〜階段手摺設置義務は2000年〜
魅力的な古い家の階段は、急勾配で手摺がないというお家が多く見うけられます。それもそのはず、法的に階段手摺設置義務が明記されたのは2000年の改正建築基準法施行令からなんですから。
先日階段手摺のご依頼頂き、取り付けさせて頂いたお家も1988年頃の竣工でした。
〜階段手摺のデザイン〜
今までは階段手摺を安価に、そして簡素であって美しく魅力的な古いお家との取り合わせの良さを考えてご提案させて頂いていました。
①素材でワンポイント

②回り階段と転落防止の組み合わせ
4段回りの後の直階段に、 古柱に添わせた縦手摺と、 90幅のストレート手摺。 90幅の理由は2階狭小部に支柱を無くし、 一部転落防止の手摺を兼ねる為。
③単純ストレート階段とのバランス
既存柱のサイズ感と、 握りやすさを考慮して、 60幅の材料で施工した、 ストレート手摺。
〜今回の最優先目的は高齢者利用の安全性〜
この度の階段手摺は、「安く」というのは当然の命題だったのですが、何より依頼の目的は「安全性最優先」ということ。そうなってくると、一番安価な上の事例ではなく、一般的な「丸棒手摺」の他にはありません。

古い家の手摺計画で一番難しいのは「手摺のみ施工」。その中の「下地補強方法」が難題になります。この度の既存住宅の構造は「重量鉄骨」。さらに難しくなりました。
〜下地探し〜
この度は下地を探す為に、一部解体調査をしながら既存住宅の下地構造を探っていきました。
使用する工具はカットソー。 補強木材の裏側で下地構造調査。 4ミリベニヤの下は横胴縁構造でした。
その後は補強木材取り付けて

完成
横胴縁にビス留め後。 コーナー部材で既存住宅の不陸を吸収。 急勾配でも部材は対応。 安全面優先でしたが、窓干渉を避け打ち合せにより右側設置へ。 それにより2階居室までの連続手摺が可能に。
魅力的な古いお家はデータの蓄積が大切になります。年代、地域性により施工方法や基準も変わっているから。一つ一つが大切な学びであり、何より「取り合わせの良さ」というバランス感覚のようなセンスを磨いてくれます。
リノベーションで空間全体を変えるよりも、部分的な工事の方が「取り合わせの良さ」を考える上で挑戦するほどに学びをくれます。これからも、古い家専門工務店として今ある古い家の魅力を考慮し、取り合わせの良い美しさを暮らしの中に添えることができるよう精進していきたいと思います。