「物語のはじまり」
リフォーム済み中古物件を購入された方からHPに相談の問合せを頂きました。
購入時からあった「備え付けソファ」
生活されてみて、自分の今の生活には合わない配置などから動かしてみられたところ・・・
床上に配管、配線が出てきたとのこと
この配線、配管を隠す為の「台」をつくれないか。という相談からお話がはじまりました。
まずは実際に様子を伺いにご自宅へ。
「黒猫ちゃん二人の為の空間づくりへ」
打合せの流れは、様子を見させて頂いた後、今ある状況をどう生かして行くかという方向性の検討から進めさせて頂きました。
配管を隠す台以外に据え付けソファで隠れていた壁面も仕上げがないので何か対策をしないといけません。
両側はアールの飾り棚空間。

片側和室と片側サッシという状況でこの両側アール飾り棚も出幅が異なり、既存据え付けソファもそれに合わせて手の込んだ「形」で造作されていました。
このソファ周辺は形は「いびつ」であってもタイルが貼られていたりとお金をかけて綺麗に装飾されているので、周囲には手をかけずソファの部位だけで周囲に馴染ませる「何か」の台がつくれたらと考えました。
クライアント様と打合せさせて頂くと、きっかけはTV配線とのバランスも悪いしこのスペースがいびつで使いずらいからということでした。しかし、その他の住居スペースには現在の生活に収納不足などの大きな不満も無いようでした。このリビング空間だけ見させて頂いても全体的に綺麗にアレンジされておりとても素敵に生活されておられるので、このスペースに装飾を施したいという感じでも無い様子。
それなら。と、言葉で提案させて頂いたのが
クライアント様と一緒に生活されている「黒猫ちゃんお二人の為の空間」でした。
「猫の気持ちで考える」
そこから構想に時間をかけさせて頂きました。
固定式では以前の据え付けソファと変わらないので、可動式で。
猫ちゃんの気持ちを考えると
飽きることなく。ずっと2匹で面白がってもらえるような。
2匹それぞれの居場所があって、クライアント様の生活動線ともからめながら。
猫ちゃんの為のスペースではありながらも、収納、飾り棚としても使えるような。
そんな条件を自分で出してみながら、この空間、このクライアント様の生活だけのベストを探るシミュレーション。
可変的で、組み合わせ自由で、アレンジできる面白さと、飽きのない無限ループがつくれたら。
猫ちゃんの動線を考えると、ここでは「走りまわる」というよりは「隠れる」「落ち着く」「高く上がる」「眺める」そんな居場所。
猫の「溜まり場」、猫溜り。

そのような発想からこのような素案ができあがりました。
「“猫溜まり”をつくる」
そこから、素材提案と色決めを行い、サンプルを試作。
天板と台の素材は長期的な衛生面も考え「檜の無垢板(岡山県西粟倉産)」に自然塗料の「いろは(月と雨オリジナルヴィンテージ色)」の仕上げとし、インテリアとしても永く感情を動かしてくれる素材と見た目にしました。あとは安価な素材に手を加えてバランスをとるようにしました。

打合せの時には早速木箱にのってくれたので、手応えを頂きました。
ただ、ここからは製作に1ヶ月コツコツお時間頂きました。
木箱の大量生産とマンションという環境なので現場での加工は非常事態以外無いようにしておきたいと思い、すべて加工済みで搬入する計画にしたからです。
そして、何より。
このような製作は家具屋さんに頼めば綺麗につくってくれるでしょう。デザインもデザイナーさんに頼めばシンプルにまとめてくれると思います。せっかく古い家のリノベーションを行っている工務店である月と雨建築舎に「そういえば以前面白いことをしている人を見つけたな」というきっかけからお問合せ頂いた経緯から依頼を請けさせて頂いたことを考えるとここでひと手間、月と雨 建築舎だからする加工を施させて頂くことをご提案させて頂きました。
猫ちゃんが使い込んで傷だらけにしても怒ることなく「いい風合いになってきた」と傷や凹みを喜べるように。ガシガシ使い込んで頂ける「道具」のような存在になれるように、人の手で触る部分に染み付いた油、猫ちゃんが通り剥がれた塗装、新品でも使い込まれた風合いを施してやっと完成です。
「そして、納品」
前日からドキドキしていた細かな納まりも不具合なく

難関だった「床、壁全ての配線を無理なくかわす台と背面」が完成。

そこから、まずは2匹が隠れんぼしながら行き止まりのない上下左右を面白がってもらえるだろうと図面にした配置に

全てが見渡せるのではなく、まっすぐには行けない空間もつくりながら、興味をひいて好奇心のスイッチを押すことが出来たらと願いのような想いを込めて。

後日、クライアント様から写真が届きました。
馴染んで面白がってくれるといいな。