昭和レトロで素敵な古い家を同時に2軒打合せさせて頂きました。
どちらのクライアント様も最初に
「こんな家を診てもらうのが恥ずかしかった」
「こんな家を相談するのが恥ずかしかった」
と、口にされていました。
しかし、同時に「古い家が好き」「新しい家を見て回ってもピンとこなかった」というような内容の言葉を口にされ、昭和レトロな素敵な古い家を愛されている感じが伝わってきました。そして、どちらのお家も素敵に住みこなされている雰囲気が漂い、台所などの佇まいにこちらが興味を持つほどの空間がそこにはありました。
昭和レトロで素敵な家に馴染む色探し
今までは古材色として「風化」や「劣化」など、流木や風化した足場板のような、木材に含まれるタニンと反応したような色合いをつくってきました
でも、今回は「古いものが好き」「足場板も好き」と言ってもこれとは違うもの。
クライアント様に送って頂いた、好みの古家具の写真

ここからスタートして行きました。
長時間放置され、風化・劣化した木材の風合いではなく、長い時間使い込んでできた家具の風合い。
飴色。それも手の油が染み込んでできたような飴色。
単純なクリアカラーやミツロウの風合いではない。
「着色する飴色」でもない。どちらかと言えばクリアカラーに近い色素の薄い感じ。
それをどうやって出すか、色々試しました。
失敗を重ねながら
倉庫にある過去の塗料の使い込まれ具合をじっと眺めながら
そして数ヶ月悩み、挑戦して辿り着いた理想が実家の古建具にありました。


それをイメージした後にふと手元をみると、
5年前に端材で試作したモノが目に止まるようになりました。

この塗装なら「使い込まれ具合」が数年後に理想の色合いになってくれる!と、いうことに気付きました。
そこからこの塗料を思いだし、試作。
でも、この塗料は「家具用」だったので床材に塗装すると滑るということが判明。
そこで またオリジナルカラーをいつも造って頂くアールジェイさんに相談。
そのような過程を経て、たどり着いたのが、このいろは特別調色です。


ヨーロッパの古物のようでもあり、日本の古物のような
「丁寧に、長い時間をかけて使い込まれた」ような、この色合いです。
古いモノを生かす為に、新しいデザインを作り込むのではなく、
古い時季(トキ)の紡がれたモノを直して使うことを大切にすることを理想とするのが「残りものリノベ」です。
古い残りものを少しだけカッコよく引き立たせるアイデアを考えることが仕事になります。
古いモノでも、新しいモノでも「使い込むカッコよさ」を大切にリノベーションできたら最高です。
それがやがて、
「消費」させない魅力に、
記憶を紡ぎたくなる魅力に、
創り、直し、使い続ける魅力に、
繋がってくれたら最高です。
バカみたいな所に目をつけ、バカな葛藤、バカな議論を重ね、工夫を紡いでいます。
凄いことではなく、バカなことをやっていると思っています。でも、それが面白いんですよね。
思い通りにならないことを、工夫を紡いで面白く!
思い通りにならないから面白い!
さて、ここからこの2軒のリノベ現場の物語を紡いでいきたいと思います。