1970・80年代の住居特性

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「家族中心でも人を招きたのしみたい家族向け」

ソフトオープンに「しつらい文化」を再活用

間取りの「機能重視」でnLDKタイプという個室重視で窮屈な住居が量産される前の時代がこの年代です。戦後住宅難を経験した上に、限られた資源・限られた財産で復興するしかなかった日本は住居を「接客重視型」から「家族重視型」へシフトしていきました。

しかし、この年代まではまだ少し「接客への意識」がみられる和室の続き間など日本の「室礼(しつらい)」文化が残っています。この間取りは現在からみるとリノベーションで魅力的な間取りにできます。部屋を「機能(使い方)」で限定して使い分けるのではなく、空間を使い方で変化させることのできる考え方を、この年代の間取りをきっかけに少しアレンジして見直してみるのも良いのではないでしょうか。

「質より量という表現が果たしてマイナスだけかどうか」

新しい耐震基準導入の時代を見抜く

1970年代「質より量」の政策が選択された時代から少しずつ耐震基準が導入され、防音性能も高まっていった80年代。

考え方によっては「日本の職人意識が残る中、住宅がつくられている。」解体した住居のつくりは「今では見られなくなった技術も残っていた。」これを現代の「人の手間が少なくなっているつくり」と比較して本質的に「質より量の時代」とマイナスイメージに捉えるかどうかは人それぞれ。

「日本の時代背景」

1970年 大阪万博

1973年 第一次オイルショック

1979年 第二次オイルショック

地価高騰

建築の業界では、1970年代から少しずつモダニズム建築は歴史的役割を終えたとする「ポストモダニズム」の時代へ。モダニズムの行き過ぎた機能主義や合理主義は世界を退屈なものにさせるのではないか?とされ表層的なデザイン操作がもてはやさせる時代へシフトしていった。しかし、80年代を全盛期に90年代にあっけなく消え去る。

(概略)1970年〜80年代の住宅事情

「郊外型大規模団地の歴史」

1970年代

郊外のミニ開発が極度に進行。1955年に設立された日本住宅公団の分譲集合住宅が大量に供給される。公団住宅は質より量の政策が選択された。都心から遠隔地に公的大規模団地が大量につくられた。各地で日照紛争が発生。住宅産業・不動産資本による住宅供給が大いに発達した時期。この時代のマンションは約28畳3LDKが主流に。「nLDK」という西洋式の間取りを取り入れた住宅タイプが増えていった。居間や寝室、食堂などの一つの部屋に一つの機能を持たせることが流行した。

1980年代

公団にとっては「高・遠・狭」と批判された時代。郊外に多くの新築の空き家を多く抱えた。マンションの欠陥問題が社会の注目を浴びるようになっていた。

「建築基準法の背景」

1970年代 少しずつ耐震基準が導入され、防音性能も高まっていった。

1971年の改正によりマンション内の鉄筋コンクリートの柱部をより強固なものに。

1981年6月1日(1978年の宮城県沖地震を受けて改正)新耐震基準。

「大地震が起きても人命に関わる甚大な被害が出ないこと」

・震度6強から7に達する大規模地震で倒壊、崩壊しないこと。

・震度5強程度の中規模の地震でほとんど損傷しないこと。

(その後、1995年の阪神淡路大震災で多くの木造住宅の倒壊が発生。「耐力壁のバランス」の重要性が説かれ採用される2000年6月1日交付の改正基準法へ。木造住宅の耐震基準を強化。耐震改修促進法制定。)

「災害と住宅遍歴」

1978年 宮城県沖地震(新耐震基準導入のきっかになる)

「住宅の構造遍歴」

1979年地震係数が改訂

「基礎」

布基礎形状でやっと鉄筋入り基礎を指定し始める。

「筋交い」

筋交いプレートが使われ始める。

「柱」

山形プレート(1979年頃から)

(その後、1988年頃からホールダウン金物が使われ始める。阪神淡路大震災で大きく差が出たのがホールダウン金物の採用・不採用だったと記録が残っている。単に「筋交い」を増やすだけでは耐震性能は高まらないことを証明してしまったかたちとなる。耐力壁が地震に対して抵抗する。耐力壁が破壊されるより前に柱が抜けるなどして耐震強度を失ってはならない。)

ちなみに・・・・

階段手摺設置義務は、2000年の改正建築基準法施行令から。

「断熱材の施工・使用木材の特徴」

1980年〜1999年の木造住宅

床を断熱している住宅は全体の5割程度。床の断熱材には古いものでグラスウールが使用されている。その後、押出し法ポリスチレンフォームが用いられる。

天井の断熱は、床断熱よりも施工されている確率が高い。

1990年代から使用木材で「人口乾燥材」も徐々に使われるようになってきた。

(アルミサッシ+複層ガラスが徐々に増えるのは2000年以降)

(2003年以降内装材はF☆☆☆☆取得品を使用)

「マンションブーム」

1972〜73年 第三次マンションブーム

1977〜79年 第四次マンションブーム

1986〜89年 第五次マンションブーム

「1970年〜80年代の古い家の魅力」

冒頭に書いた文は僕個人、この年代の住居と向き合ってみて感じた意見です。実際に部分リノベーションを行う最初の解体作業でバラした部材には「今ではここまで造作の手間をかけない」と感心すらする造作技術が普通に使用されていました。割合の少ない部分的なものかもしれませんが、「刻みのできる熟練の大工さんが建売を建てている」時代でもあると思います。これを現代の「人の手間が少なくなっているつくり」と比較して本質的に「質より量の時代」とマイナスイメージにだけ捉えるかどうかは人それぞれだと思います。

前回の1950年〜1960年代の背景と合わせて「今ある日本の古い家(ビンテージ住居)」の価値を「物件情報と少しの写真」だけ判断せず、一つ一つの住居としっかり向き合って考えることは大切なのではないかと考えています。

小さな修繕からフルリノベーションまで

住まいの哀しみをおかしみに,
humorと施工保証の建築舎

月と雨建築舎
Concept: [故い]を付加価値に -住まいを負債から資産に-
Mission: 意に添うrenovation -哀しみの中のneedsをおかしみに-
・日本の美意識で故もの生かす「白のリノベ」 
・雨漏り漏水調査.屋根葺替え.外壁塗装.エコキュート取替工事等、建築家の感性と現場管理の経験と知恵を応用する「白のリフォーム(修繕)」

広島県内 住まいのことは月と雨建築舎へご相談ください。建築家の感性と学識に加え、家の構造・現場を熟知した設計工務店として設計監理・現場管理を行います。家全体の品質劣化・雨漏り・漏水などの瑕疵を防ぎます。

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