14世紀の日本人の住居感

月と雨紋

“1960年代のモダニズムに興味を持ち、「日本らしさ」への探求へ”

1960年のモダニズムへの興味から始まった自分の学びは、ついに縄文時代から生まれた日本人の住居の歴史にまで辿りつきました。

その途中、14世紀に書かれた「徒然草」を記した吉田兼好の意見が現代と似ているようで面白く感じ、ここへ記録しておこうと思います。

“年代がついて・わざとらしくなく・手まわりの道具も古風な感じがするほど”

「家の建て方のよく調和がとれて好ましいのは、わずかな人生を託するところに過ぎないとは思うものの、興を惹かれるものだ。

教養のある立派な人が、ゆったりとひそかに住みこんでいるところは、さしこんでいる月の光も、一段と身にしみるように思えるものだ。

当世風でもなく華麗でもないが。庭の木立も年代がついて、わざとらしくもなく自然のままに生えている庭の草まで趣(おもむき)のあるさまで、濡縁や透かし張りの板塀などの配合もおもしろく、ちょっとそこにおいてある手まわりの道具も古風な感じがするほど、おちついているのは、いかにもおくゆかしく見えるものだ。

こうして住まいに対して、大勢の大工が一生懸命に磨きたて、これは唐のだ、これは日本のだという風に、珍しくこった道具などを並べておいて庭先の植えこみの草木まで、自然のままでなく、人工的に作りたてるのは、眼を向けるのも嫌な気がして、どうにもやりきれない。

・・・・おおよそはその住まいによって、住む人の人柄も自然推察されるものである。」

出家した兼好の見方とはいえ、すでに確立した日本人の住居観がここにうかがえる。と本は締めくくっていました。

さて、現代はどうだろう。明治維新、戦後の敗戦国として伝統の文化の一部を捨て、西洋化してきたように思えた日本も、良い意味でも悪い意味でも昔の日本人からのDNA情報の上に成り立っているように思えてなりませんでした。

この14世紀の文章に素敵な表現があります。それがこの3つの言葉の前後のものです。

「・・・・年代がついて・・・・」

「・・・・わざとらしくもなく・・・・」

「・・・・そこにおいてある手まわりの道具も・・・・」

このような感覚は最近の雑誌やネット情報には書いてありませんので、よろしければ是非。と、思いまして。

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