(概念)Renovationで考える「定めなき儚さ

寂リノベ

尾道千光寺の昔の展望台です。取り壊されてもう見ることができないから懐かしく想うのか、存在し続けていれば何も想うことはなかったのか。これもまた複雑です。しかし、改めて眺めるとモダンを求めたこの時代のデザインも魅力的だなと想うのです。

政治的なこと、市の予算など詳しいことは無知な為、これについては自分の意見を言えないのですが、リノベを生業としているものとしてはっきり断言できるのは「作り変えることは簡単で、維持管理は大変」ということです。

大学の研究ゼミは都市計画を取りました。デザインに興味があったのに、なぜか都市計画。笑えます。学生の時の自分のデザインに対する思考があまりにフワフワしていて実感が湧かなかったというのが理由の一つなのですが、自分の人生の選択の七不思議です。

しかし、この1998年から少しだけ調べた都市計画についてが今では非常に興味深く根付いているのです。

その時は尾道出身ということが自分の中にあるしがみつける唯一のブランドで、学生の研究の為という理由を武器に当時の尾道駅前再開発の計画を飛び込みで拝見させて頂いたのを覚えています。

ただし、その時も今もですが、「古い歴史を残さないとダメだ」とか「新しさに古さを活かして」とかいう思いはそこには持ち込まず純粋に計画を見に行きました。

その約20年後が、現在2022年の尾道です。

尾道の代名詞となった古い歴史ある護岸はなくなり駅前も千光寺の展望台も新しくなりました。

しかし、これに対して僕はまだ新しくすることが悪であるとか、古さを残すことが正義とか自論を持ち合わせないのですが、複雑な思いであるのは確かです。これはただ単に「故郷が変わったことへの寂しさ」なのかもしれません。その故郷が「尾道」という特殊な古さを売りにしてそのブランドイメージを振り回している街だからそれに影響されているのかもしれません。

ただただ複雑な感情を持ってしまったことだけが事実なのです。

思い返せば大学時代、都市計画を研究して尾道の再開発に少し触れたものだから「リノベーションをする」というお仕事をしているのかもしれないなと思う2022年8月のお盆です。(これを書いているのは尾道に帰省せず広島の自宅なのですが)

季語「時雨」

冬の季語のようです。時雨とは本来急に雨がパラパラと少時間降ることのようです。秋から冬にかけてが一番多く、降る範囲は非常に狭い。京都のような盆地に多いそうです。その定まっていない雨の様子が「時雨」といえば人生の定めなさ、儚さをあわせてとるようになってきたということです。俳句の世界では人生の無常、時雨の定めなさが合わさって時雨はただの自然現象ではなく、人生の象徴なのだそうです。 ほんの少しですが、昔の日本の文化とは何と情緒あることかと感嘆いたします。尾道に対する古雑な感情をこの「時雨」という季語で表現できそうだなと思った2022年のお盆です。

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